蕎麦屋の桜

桜                                               前回のブログで「桜を活けるのは難しい」と書いた。実際桜を活け込む時は、必ずといってよいくらい手こずる。なので出来たら桜の活け込みはしたくないというのが本音だ。しかしクライアントからは桜を活けて欲しいとの注文が入る。その都度「僕は桜が嫌いなので出来ません」あるいは「桜アレルギーなので恐い」などと言い訳して、どうにかやらないで済むよう願うけど、最終的にはお客さんのリクエストに応えざるをえない。この写真は中目黒にある蕎麦割烹(お忍びで芸能人が来たり業界人達がもっぱら利用する店)で苦手な桜を活けたものだ。俺はこの店のオーナーとは個人的にも付き合いがあり、毎回この店のパティオに花活けするのだけれども、とにかく先方の希望は「ガツンとくる花で頼みます」だけなのだ。ガツンと言われても、俺にとってガツンでも相手はコツンとしか感じないかも知れないし、こういうのが一番困るんだよ。とはいえ、店に来る客の殆どは「ふあふあした感じ」とか「コロッとした花を」とか「バーンとした花束で」とか、言葉でイメージを俺に伝えてきて、あとは俺にお任せパターンになる。だから毎回が真剣勝負、お客と俺の感性がピタっとハマった時は言葉にならない達成感や喜びが得られる。この感じはバンドマン時代にステージの上と客席の間で生じる空気によく似ているから、むしろ心地よい瞬間でもあるわけなんだけど、はたしてガツンとした花になったかどうか、俺にもよくわからないよ・・・、 でした。