春の色は黄色から

蕎麦屋の花                                               今年もいよいよ桜の時期となり、週末あたりはあちらこちらで花見で賑わうんだろうな。日本人にとって桜は春のシンボルの花とされているけど、俺にとっての春のイメージは黄色の花だ。レンギョウ マンサク サンシュ ミモザなんかの枝花を目にすると「ああ、春がきたな」と感じる。二月に入ると市場には南の方の産地から桜の枝が出回るようになるけど、毎年桜を活ける前に先ず黄色の枝花を使って春を活け込んでいる。それに数えきれないほど桜を活けてきたけど、ただの一度として満足のいく活け込みが出来たためしがない。やはり自然の桜が放つ、あの圧倒的なスケールにはかなわないし、それこそ山にでも入って気に入った枝振りを見つけ出し、自分でのこぎりをひいて調達でもしないかぎり、桜を活けるのは難しい。この時は仕入れ先の市場でいい感じに暴れている黄梅と出会い、迷わずこれを活けたいと思った。花を仕入れる時にいつも感じる事があって、一期一会と言ったら少々大袈裟かも知れないけど、気に入った花材と出会えるかどうか、これがとても大切になってくる。だから自分の感性を研ぎすまして花材と向き合わないと、ついうっかりと見逃してしまう事も多々ある。師匠の言葉をかりて言えば「花とは 抜き差しならぬ 一期一会である」なのだ。この時は桑の枝とコデマリ、それと黄梅を使って大きめの信楽の花器にたっぷりと活けてみた。ちょっとは春を感じてもらえた?