ほどけるものは切らぬように

プレゼントを貰った時、きれいにラッピングされた箱に結んであるリボン、みんなはどうするんだろう。俺は必ずといってよいくらいハサミで切ってしまう。またスーパーなどで買い物したおりに、品物がこぼれ落ちないようレジ袋なんかの口を結ぶだろ、あれなんかいつも力まかせに引きちぎってるし、なにか梱包されて紐やロープがかかっている場合、迷わずハサミで切る。まあそれらについては、ほどこうが切ろうがたいした問題ではないけど。それが人間関係となると話は違ってくる。ずいぶんと昔、友人から「人生における100のインストラクション」なるものをプレゼントされ、その内容にえらく感心し、暇さえあれば目をとおしていたけれど、不覚にもいつのまにか紛失してしまった。人生の指針教訓となる100のインストラクション、せめて10や20は覚えていて、今後の人生に多いに役に立てていければいいのだけれど、三日前の事すら忘れていまうボンクラな俺なので、もはやそれらを思い出す事は不可能だ。でも100の中のたった一つだけ覚えているものがある。それが「ほどけるものは切らぬように」だ。物事を深く考える事が不得意で「俺は体育会系なので体で感じることを第一とし、頭で考える事なんて信用出来ねえ」などと大真面目に思っていた俺が唯一覚えているのは、この言葉がとても印象深く心に残っていたからだろう。「もうあいつのことなんか知るか」と修復できた友人関係や女子との恋愛関係でさえバサっと切ってしまう愚かな自分への戒めとして、この言葉がScan 130720001インプットされたんだな。あれからもうずいぶんと俺も歳をとったけど、あいも変わらず修行が足りてないが故、いまだにほどけていない関係もあり、その事を思うと心が痛い。今回の病気のことで、超ご無沙汰してしまった多くの人達に勇気をもって電話をかけたんだよ。なつかしい声とともに、皆俺のことを気にかけていてくれていたことがわかり、申し訳ない気持ちとありがたさで胸がいっぱいになったよ。後日「やのうさんが思っている以上に嬉しかったです」「先生の声を耳して、ドキドキするくらい嬉しい」などのメールまでいただき、恐縮するとともに「こんな俺でも誰かのささやかな力になれるんだ」と感じたとたん、不覚にも嬉し涙をこぼしてしまったよ。病気の事もあって、少し気持ちがデリケートになっているのか?とにかくみんな本当にありがとう。アホな自分への戒めとして、我が家の二階への階段の壁に帯を結び、 ほどけるものは切らぬよう 心がけております。