気分は庭師

もって生まれた性分か修行が足りてないないのか、数ある俺の困った性格の一つに 褒められ好き ひらたく言えば ちやほやされるのが大好き、どんな事よりも好きという、自分でも手を焼く性格がある。他人がみればとるにたらないささいな誉め言葉にもすぐに有頂天になり、そうなるとたとえお世辞とわかっていても、褒めた相手はいい人、いやすごくいい人になってしまう。単純なんて言わないでくれよ。                     いまや仕事としての花活けはいっさいせず、なにかデカした事したかといえばそれもなく、晴れた日には波と戯れ、寒さ厳しい冬は家から一歩も出ず、よって当然のことながらとなり近所の評判はかんばしいはずもなく、だから俺の大好きなお褒めの言葉なんぞもうずいぶんと耳にしてない。「いかんな、このままではこの先一生褒め言葉とは無縁の人生になってしまう、なんとかせねば」いちおうクリエーターを自認してる俺としては、ここはひとつ自分の存在を形で表現しなくてはと多いに悩み、ひとつの答えがでた。まずほとんど無収入の俺としては、経済的に負担のかからぬ素材はないかと思案した結果ひらめいたね。だてに毎日海へ出かけてるわけじゃねえぞ。おりしもその頃はお盆や彼岸時期だけ墓掃除の仕事に精を出していた頃で、お隣りさんの山本さんのおばあさんなんて、朝の出勤で車に乗り込む俺の姿をみて「あらお仕事、偉いわね」なんていわれるていたらくな日々をおくっていた頃だったもので、その山本さんにも俺の存在感を示さなくてはいかん。そこで気分だけは伝説の庭師 重森三玲。早速完成した作品を見ていただいたところ「すてきだね。さすが芸術家だわ」とのお言葉。これこれ、これですよ、俺が大望していた言葉は。よしこうなりゃお向かいの可愛い姉妹にも見せなくちゃ。「きゃぁ可愛い、ミッキーがやったの?」もう久しく耳にすることがなかった言葉の嵐。もうこの日は嬉しさのあまり興奮しすぎてついつい深酒。よって家人には褒め言葉どころか、すこぶる評判がよろしくなかったです。あっそうだ、これは三年以上前の話ですけど、誤解のないよう。今は勤労に励んでいるので評判は上々です。庭師