Make it Funky !   

昔日本中にディスコブームが吹き荒れる前に、こんなファンキーなクラブがあった。横田の基地内にある黒人専用のラウンジでTop5クラブという名前であった。
正式にはTop5クラブラウンジという。Top5クラブじたいはもっとデカいハコで、フルバンドが演奏できるほどのステージと客席やダンスフロワーを備えたクラブだ。

レイ・チャールズの前座ステージで演奏したのもこのクラブである。日本各地にあった米軍キャンプのなかでも一番格上のクラブ、特にブラックミュージックの殿堂的な存在で、ソウルバンドの憧れのステージでもあった。当時俺達のバンド ハイウェイメン(このクラブに出演する時はアフロディーズのバンド名で出演していた)はこのクラブのハウスバンドで、FEN放送を聞きつけて関東エリアの黒人兵が大勢このクラブに集まってきたものだ。いわばファンだな。

このクラブはEMクラブと言って、基本的には白人や黒人(バンドマン流に言えば、ロイクやロイシ)将校やぺーぺーの兵隊など階級の区別もなく遊べるクラブだ。写真のクラブはラウンジのほうで、実はこのクラブの方が敷居が高い。なにしろ客は全員ロイク、ウエイトレスもバーテンもロイク、もちろん日本人は俺達バンドだけ。客の話し声が聞こえてくるほどの狭さだからいっさいのごまかしはきかない。
もともとベースキャンプのクラブは滅茶苦茶客の反応がシビアで、バンドの善し悪しで喧嘩になったりどんちゃん騒ぎで盛り上がったりと、そうあのブールースブラザーズの世界そのまんまだよ。
だから毎回ここに出演する時はステージで足が震えたもんだ。キャンプのタイムスケジュール、つまり演奏時間帯は全国共通で音出しの時間の差はあれ、演奏時間は45分プレーして15分休憩これが4回、最後に1時間の合計5回ステージだ。どのステージも手抜きなんぞしたら一発で客はいなくなる。客がいなくなるという事は二度とそのクラブからのオファーがないという事だ。

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だから毎回が真剣勝負、日本のクラブみたく流行もののヒットパレードを演奏していればOKみたいな、そんな音楽に対しての妥協なんていっさい通用しないから、気にいらなければサーっと客はひくよ。これほど鍛えられるステージは後にも先にも経験がないな。そのかわりウケた時の反応はスゲーぞ。もう俺の眼前までロイクの男女がファンキーに踊りまくり、まさにソウルトレインそのまんまだよ。
その当時のソウルミュージック専門チャートの渋いレパートリーを演奏してる音源がワンステージ分手元にあり、今となっては俺の大事な宝物のひとつだよ。

もう何十年も前の演奏を今聴いても、流行のファッションで着飾ったブラザー達のステップや手拍子、匂いまで鮮やかによみがってくるよ。Make it Funky!!

この当時のエピソードをまとめた小説 フラワーチルドレン 近々電子書籍にて発表の予定です。乞うご期待しててくれよ。