娘への手紙

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廣美ちゃん、先日はありがとう。

君がフェイスブックで俺を捜し出し、およそ40年ぶりという、途方もない年月を経てコンタクト出来たあの日以来、俺は正直とても複雑な想いでいたんだ。

そして、なんとか自分の気持ちを整理しようとしたが、君と毎日やり取りするうちに「とにかく君に会わなくては、会いたい!」との想いに至った。

待ち合わせた場所で、車から降りた俺に「パパ!」と叫びながら抱きついてきた瞬間、あの頃毎晩君を抱いて過ごした日々が鮮やかに蘇ってきたよ。

ヒロ、パパを許してくれ。

あの頃の俺は、酒とドラッグに浸りきった、荒んだデタラメな暮らしをしていた。

それでも、毎晩ステージを終えて家に戻り、君の可愛い無垢な寝顔を見ているその時が、唯一穏やかで安らいだ時間だったことは本当だ。

大人(といっても俺達はどうしようもないガキだった)の都合とはいえ、あの時俺は大切な宝物を手放してしまった。

俺にとってあの時代は、自分でしでかした事ながら、出来る事なら忘れてしまいたい、なかった事にしたいと思っていたが、そんな都合のいい話なんてあろうはずもなく、君の事を思い出すといつも胸の奥がたまらなく痛んだ。

だから君の口から「パパはいつも優しかった」「幼いわたしは、大きくなったらパパのお嫁さんになりたいと、本気で思っていた」「物心ついてから、ミッキーパパが本当の父親でないと母親から知らされショックだった」などと聞かされた時、俺はとても救われた想いがしたよ。

みなとみらいで君と二人ランチデートしながら、君のこれまでの人生、そして今の暮らしぶりをいっぱい聞き、俺はたまらなく嬉しく、そしてとても安心した。

大人になって君が離婚も経験し、決して平坦な人生を送って来たのではないにも関わらず、きっと俺に心配をかけまいとそう思ったのだろう。

そんな君の優しさを考えると、心が痛むよ。

でも、今の君は新しい家族四人と暮らし、旦那さんから大切にされている様子もうかがえ、そして仕事も頑張っているとの事、俺はなによりその事が嬉しい。

過ぎてしまった昔の事は二度と戻らないけれど、君がずっと俺に対して抱いていた想いにパパは応えていきたい。

今度は、君が好きだと言った代官山のハリウッド・ランチマーケットでデートしよう。

それから、あの時の俺は年甲斐もなく動揺してあがりまくってしまい「もっとああすればよかった、もっとこうしたかった」と悔やんでいることがある。

その一つ、ちゃんとおもいっきりハグさせてくれ。そして俺と手をつないで歩いてくれ。それから、別れる時は頬にキスをしてくれ。パパからのお願いだ。

今こうして、君が現実となって俺の目の前に現れたことに感謝するとともに、俺も尚いっそう長生きせねば!と、気合いが入ったよ。

これはパパから君へのラブレターだ。

ありがとう、廣美。

 

このホームページに、こんなプライベートな話を載せてよいものかどうか悩んだ。ずいぶん悩んだが、こうする事で俺自身の気持ちの整理がつけばと、そう判断し書き込みました。今回の突然の出来事に、不肖矢納、これからの残りの己の人生、正直で誠実に生きていこうと思った次第です。